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夢見る勘違い女

  • 2009/10/15(木) 17:45:00

らぶぼにーた



すると 窓の隙間から 

蚊の鳴くようなか細い声で 私の名を呼ぶ声が聞こえるではないか 

そうかと思うと にょきっと顔が現れ 隙間から恨めしそうに私を覗いてる

気味悪いその覗き魔に驚き叫びそうになったが よくよく見れば彼だった 

その顔が彼だとわかるな否や 急いで玄関へ行き 

ドアを開け とりあえず彼を部屋へ招き入れた 



狭い私の部屋ではなく ダイニングへ通すと 何を飲むか彼に尋ねた 

いつもならビールと言うのに 何も要らないという彼の顔は 

目の下にはげっそりとした隈 

体毛の薄い いつもはツルリとした顎には ごま塩のような無精髭が生えていた  

如何にも臭そうで 何日風呂に入ってないんだみたいなヨれたワイシャツ 

そこにいる彼は私の見たことの無い まるで知らない男のようだった  

その風貌をみただけで 瞬時にどれだけ彼を苦しめたのかがわかる  

最初は強い態度で出ようとした私も 何だか彼が憐れにみえて何も言えないでいた 



彼が何をしにここへ来たのかは 大凡わかっていたつもりでも 

あまり自分から語りたがらない彼の言葉を待とうと思い 

何処を見てるんだかわからないような 虚ろな目をした彼の横顔を見つめてると 

同情なのか愛情なのかわからない感情が私のなかに込みあげてきた 

しかしいっこうに喋ろうとしない彼 

手持ち無沙汰な私は 徐にビールを出しながら  

腹は減ってないのか? ちゃんと寝ているのか? 

世間話をするかのように切り出した   


『何も食べれないし 眠れるわけないだろう』 
 

涙を必死で堪えながら嗚咽にも似た声で返す彼の顔を見ていると 

私の胸をチクチクと針が刺してくるようだった      


『何も言わずに去るなよ』


吐き捨てるような口調に チクチクと痛んだ胸が少し疼く気がした 

この時一瞬だけ 心の底から眼の前にいるこの彼と一緒になりたい 

一緒になって お腹の赤ちゃんを産みたいと思ってしまった 

止め処なく流れる涙は 今までの自分の愚かな行動への苛立ち 

妻子のある人をどうして好きになってしまったんだろう 



私は部屋に戻ると 息子達の母子手帳と一緒に挟んであった 

小さな豆粒みたいな赤ちゃんが写った写真を抜き取ると  

そっと彼の前に差し出した 





最後まで読んでくれてありがとう ポチッ